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INTRODUCTION

鍋やフライパンまでありとあらゆるものを叩きながら過ごした子供時代から、世界中のスタジアムで旋風を巻き起こすようになるまでの道のりはどんなものだったのだろうか?クライマックスへ向けた特別なセッションへの道のりを軸に、錚々たるドラマーの面々がドラムの歴史、自身のキャリア、音楽やドラムそのものについて語る、貴重なインタビューが交錯しながら自然とドラムへの理解が深められてゆく。

現代ドラム文化の本拠地たる米国と、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、レッド・ツェッペリンといった偉大なバンドを産み、お互いに影響を与えながら音楽文化を発展させてきた英国。伝説的なジャズ・ドラマーたちが現代のドラマーと音楽に対して与えてきた影響を解説しながら、それらのレガシーをロックへ持ち込んだジンジャー・ベイカーの功績を讃え、ニック・”トッパー“・ヒードンやラット・スキャビーズといった伝説的なパンク・バンドのドラマーをフィーチャーするなど、英国制作ならではの視点が光る。

子供たちが初めてドラム・セットを手にした際の喜びを爆発させる瞬間を筆頭に、リラックスして楽しめる作品でありながら、ニコ・マクブレイン、スチュワート・コープランド、シンディ・ブラックマン・サンタナ、チャド・スミス、テイラー・ホーキンス、ロジャー・テイラー、ジム・ケルトナー、イアン・ペイスといった超一流ドラマーに留まらず、ベン・サッチャーや、エミリー・ドーラン・デイヴィスなどの若い世代のドラマー、更にはロス・ガーフィールドのようなドラムに関するスペシャリストにもスポットが当てられ、玄人を唸らせる深みも兼ね備えている。全編に渡ってドラムへの愛が溢れた作品でありながら、ドラムに関する専門的な知識は不要。全ての音楽ファン必見のドキュメンタリー!

CAST

ロジャー・テイラー
(クイーン)
イギリス出身、ロックバンド、クイーンのドラマー。クイーンではドラムスのほかにコーラスや、一部の曲でヴォーカルも担当。ソロではヴォーカルはもちろんのこと、ギター、ベース、キーボードなども披露するマルチプレイヤー。“RADIO GA GA”や、“A Kind of Magic” などの楽曲を生み出した優れたソングライターでもあり、後期クイーンのシングルヒットに貢献した。
イアン・ペイス
(ディープ・パープル)
イギリス出身のドラマーで、現在も活動しているイギリスのハードロックバンド、ディープ・パープルの唯一のオリジナルメンバー。1960年代からロック・シーンの第一線で活動を続け、ディープ・パープルの他にも数多くのバンドで演奏した業界の第一人者として知られる。現在の第一線のプロには数少ない、左利きのドラマーである。
ニック・メイソン
(ピンク・フロイド)
イギリス出身のドラマー、音楽プロデューサー。プログレッシブ・ロックバンド、ピンク・フロイドのメンバーで、バンド結成以来の唯一のオリジナルメンバーである。タイトに正確にリズムを叩くタイプではなく、緩やかに緩急をつけたドラムが特徴的。2019年、大英帝国勲章(CBE)を叙勲。
チャド・スミス
(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)
アメリカ出身のドラマー。ロックバンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの4代目のドラマーとして加入。世界各国でドラムクリニックを行っているほか、サイドプロジェクトのチキンフットでも活動している。身長191cmという巨漢からなるパワフルな打撃ながらも、グルーヴィーかつ安定感のあるドラミングは、数多くのドラマーに影響を与えている。
スチュワート・コープランド
(ポリス)
アメリカ出身のドラマーで、作曲家。イギリスのロックバンドであるポリスの創立者で、精密かつエネルギッシュで、スネアドラムではなくバスドラムでバックビートを打つという、レゲエに影響を受けた革新的なドラムスタイルで知られる。一方、1980年代にフランシス・フォード・コッポラやオリヴァー・ストーンの監督作品などの音楽を担当して以来、作曲家としても活動してきた。
ニック・“トッパー“・ヒードン
(ザ・クラッシュ)
イギリス出身のドラマー。パンク・ロックバンド 、ザ・クラッシュのメンバーとして知られる。正確なタイミングやテクニックから、1970年代後半~1980年代前半にかけての最高のパンク・ロック・ドラマーとされ、ザ・クラッシュのボーカル、ジョー・ストラマーは、ヒードンのドラムはバンドの生命線だったと語っている。1982年ドラッグ中毒の影響でバンドを脱退。
テイラー・ホーキンス
(フー・ファイターズ)
アメリカ出身のドラマー。サス・ジョーダンやアラニス・モリセットのツアードラマー、プログレッシヴ・エクスペリメンタル・バンド“シルヴィア”のドラマーなどを経て、1997年よりフー・ファイターズにドラマーとして加入。ワイルドでエネルギッシュなドラミングが特徴。2022年ツアー滞在先のコロンビアで急死。
シンディ・ブラックマン・サンタナ
(サンタナ/レニー・クラヴィッツ)
アメリカ出身で、レニー・クラヴィッツ・バンドなどで活躍するドラマー。ジャズを基本としているため、とても自由なプレイスタイルで、女性とは思えない程シンプルでパワフルなドラミングが特徴の数少ない女性ドラマーの一人。カルロス・サンタナと結婚し、サンタナのバンドや自身のグループなど幅広く活動を続けている。
クレム・バーク
(ユーリズミックス/ブロンディ)
アメリカ出身のドラマー、俳優。ブロンディの結成時からずっとドラムを叩き続ける一方、パワフルなドラミングを買われて様々なアーティストから声が掛かり、ラモーンズの1987年のライヴで“エルヴィス・ラモーン”として助っ人を務めたり、ボブ・ディラン、イギー・ポップ、ユーリズミックスなど数多くのアーティストサポートをしている。
ニコ・マクブレイン
(アイアン・メイデン)
イギリス出身のドラマー、ヘヴィメタル・バンド、アイアン・メイデンのメンバー。フランスのヘヴィメタルバンド、トラスト、パット・トラヴァースバンドなどを経て、4thアルバム『頭脳改革』より参加。トリッキーで手癖のあるドラミングで知られる。ヘヴィメタル系ドラマーとしては珍しく、ワンバス・シングルペダルに拘り、ライブでは裸足で演奏することが多いのも特徴。
ラット・スキャビーズ
(ザ・ダムド)
イギリス出身、パンク・ロック・バンド、ザ・ダムドのドラマー。バンド結成時から1977年、1978年から1996年まで在籍。ダムドサウンドの根幹とも言える、重厚且つ破天荒なドラムを叩き、ドラムセットを破壊する派手なパフォーマンスでも知られている。長年マネジメント面でバンドの要として活躍し、2023年11月にはザ・ダムドへの正式復帰を発表した。
ボブ・ヘンリット
(ザ・キンクス/アージェント)
イギリス出身のドラマー。ザ・キンクス、アージェント、バスター・メイクル & ザ・デイブレーカーズ、ユニット4+2、ルーレッツなどのメンバーとして活躍。堅実でタイトなドラミングで知られる。ザ・フーのボーカリスト、ロジャー・ダルトリーを含む、多くの著名バンドのリード・シンガーのソロ・アルバムに参加している。
ジム・ケルトナー
(トラヴェリンク・ウィルベリーズ/エリック・クラプトン/ライ・クーダー)
アメリカ出身のドラマー、セッション・ミュージシャン。1965年にドラマーとしてのキャリアをスタート。著名なアーティストのレコーディングに数多く参加しており、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターらビートルズのメンバーや、ローリング・ストーンズのメンバーとのセッションで知られている。
エミリー・ドーラン・デイヴィス
(ザ・ダークネス/ブライアン・フェリー)
イギリス出身、英国を拠点に活動するツアー兼レコーディングドラマー。2008年にプロとしてのキャリアをスタートさせ、そのパワフルなサウンドでブライアン・フェリー、ザ・ダークネス、キム・ワイルドなど、数多くのトップアーティストと共演。ポッドキャスト「A Drummer's Guide To...」を運営し、若いドラマーが業界に進出できるよう支援する活動も行っている。
スティーヴン・パーキンス
(ジェーンズ・アディクション/ポルノ・フォー・パイロス)
アメリカ出身のミュージシャン、ソングライター。ドラマー兼パーカッショニストとして、ジェーンズ・アディクション、ポルノ・フォー・パイロスなどのバンドに参加し、オルタナティヴ・ロックの代表的なプレイヤーとして知られる。新しいバンドを展開し活動を続ける傍ら、ドラムクリニックや音楽療法セッション等多方面で活躍している。
ベン・サッチャー
(ロイヤル・ブラッド)
イギリス出身のドラマー。2013年からベース/ヴォーカル&ドラムのロック・ユニット、ロイヤル・ブラッドに参加。同年11月に発表したシングルの独創的でエキサイティングなサウンドは全英のメディアに「一大センセーション」として取り上げられ、英ロック・チャートで堂々1位を記録。火を噴くようなヘヴィ・ヒッティングなドラミングが特徴的。
サマンサ・マロニー
(イーグルス・オブ・デス・メタル/ホール)
アメリカ出身のミュージシャン、ソングライター。ホール、モトリー・クルーのツアーメンバーでの演奏でも知られている、パワフルなプレイスタイルのハードロック女性ドラマー。音楽的才能はドラムだけに留まらず作詞・作曲、プロデュースにまで広がり、さまざまな映画音楽やサウンドトラックも手掛けている。
エイブ・ラボリエル・ジュニア
(ポール・マッカートニー/スティング)
アメリカ出身のドラマーで、ジャズベーシストのエイブラハム・ラボリエルの息子。セッション・ミュージシャンとして、2001年以来ポール・マッカートニーのツアー・バンドのドラマー兼バック・ボーカリストとして最もよく知られている。パワフルなドラム・プレイが特徴で、スティング、エリック・クラプトン、スティーブ・ウインウッドなどのライブやツアーにも参加している。
ジェス・ボーウェン
(ザ・サマー・セット)
アメリカ出身のドラマー。10代のときに共同設立したポップ・ロックバンド、ザ・サマー・セットのメンバーとして知られる。2017年以来、ツアードラマーとして活動を続け、3OH!3、アリス・グラス、テッサ・バイオレット、ザ・レディ・セットなどのアーティストと共演。2014 年のオルタナティブ・プレス・アワードの「最優秀ドラマー」にもノミネートされた。

STAFF

マーク・ロー
(監督・製作)
20年以上にわたって様々なジャンルの映画やテレビ番組に携わり、映画音楽の分野でキャリアを築く。エグゼクティブ・ミュージック・プロデューサーとして、トッド・ヘインズ監督の『キャロル』(16)、ポール・ハギス監督の『サード・パーソン』(14)、『レイルウェイ 運命の旅路』(14)、アマ・アサンテ監督の『ベル ~ある伯爵令嬢の恋~』(未)、リー・タマホリ監督の『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』(12)などの作品を手がけた。クリエイティブな分野に強い身内と一緒に、映画やTVのプロジェクトを企画・制作するアサイラム・ジャイアント社を設立。

COMMENT

※敬称略・順不同
人生とは出会い。人との出会いはもちろん、
自分の未来を輝かせるモノに出会った瞬間のことをきっと誰もが憶えているはず。
僕の場合、それはまさにドラムだった。
この作品は、純粋で夢中な気持ちを忘れないように呼び起こしてくれる処方箋のよう。
僕のための映画であり、皆んなのための映画なんだ!!
茂木欣一
(東京スカパラダイスオーケストラ / フィッシュマンズ)
ドラマーのための作品。音楽を心から愛してる人のための作品。
そして、少しでもドラムに興味がある、ロックに、ジャズに…
とにかく音楽に惹かれてる人々のための作品。
私はなぜこんなに興奮したのだろう?
何となく気になっていたドラマーたちが語る言葉、そしてドラムにフォーカスを当てた過去のライブ映像、
それらが全て素晴らしく、釘付けになった。
チャドがチャーリー・ワッツを語る、イアン・ペイスがキース・ムーンを、スチュワート・コープランドがリンゴ・スターを。
自分を表現する術をドラムに見出し、音楽も演奏も愛しているドラマーの言葉には愛が詰まっていて、
私の心に、魂に、響いたのだと思う。
あらきゆうこ
(ドラマー)
ドラムを叩き始めた頃の心の浮き立ちを思い出した
ドラムのことをもっと知りたい
ドラムをもっと楽しみたい
また心が弾み始めている
シシド・カフカ
観た後には必ずスティックを買いに行きたくなる、
「ロックドラマー生態図鑑」がやって来た!
マニアックな題材ながら
音楽好きなら老若男女誰にでも。
さあ、あなたも内なる衝動でビートを刻もう!
ライデン湯澤殿下
(聖飢魔II)
ドラム/ドラマーだけに100%フォーカスした内容と
登場するドラマー達の顔ぶれがとにかくマニアック…
オープニングから大好きなSTEPHEN PERKINS~GENE KRUPAという
個人的にいきなり引き込まれるテイストで、
飽きること無く終始楽しめたスタイリッシュなドキュメンタリー。
沼澤 尚
(ドラマー)
毎日毎日叩いて叩いて出来るようになるフレーズもあれば、
1ヶ月後1年後に出来るようになる事もある。
叩いて叩いて叩いて!
言葉でもなく文字でもないリズムで気持ちを伝えたり
身も心も踊らせられたらこんな楽しいことはない。
Drumsに魅入られた子供から大人までのdrummerの
生き生きとした顔を見ると無性~にDrumsが叩きたくなる!
池畑潤二
(drummer)
どうしようもなくドラムに惹きつけられていく人々、それがドラム族です。
この映画を観ると、きっとあなたもドラムを叩きたくなる。
神保彰
(ドラマー)
ありそうでなかったドラマーにスポットを当てた本作品。
全国のドラマーや、これからドラマーを目指す人はもちろんの事、
音楽好きから音楽にあまり興味のない人まで是非観てもらいたい。
ご存知と思うけど、そもそもドラムは数ある楽器の中で唯一「これが基本の形です」という制約がない。
それはある意味、自由の象徴とも言え、各プレーヤーの好みで太鼓やシンバルの個数、位置も異なる。
正に「何でもアリ」な楽器です。叩けば簡単に音が鳴る上に、難しい理屈もない。
だから一度ハマると、それこそ底なし沼のように奥が深く抜け出せない。
そんなドラムに魅了された数々の素晴らしいドラマー達がこの映画には登場します。
それぞれにドラムにハマった訳を、まるで自慢するかのように話すその姿はとても人間味に満ちていて、
きっと好感が持てると思います。
今の時代に何かとても大切なメッセージを心に残してくれる素敵な映画です。
林立夫
(ドラマー、音楽プロデューサー)
各界の剛腕ドラマーの数々がそらまたとても嬉しそうにそしてとっっっても楽しそうに
ドラムと自己との原体験そして初対面そして現在地へと語り継いでいく。
やっぱ未だに”子供の頃のおもちゃ”としての付き合い方から今に至るまでの関係性の本質が変わっていないからなのだろうか。
だって嬉々満面にビートを口ずさむそれぞれの表情が基本みんな同じな上に、
その所謂口ドラムがめちゃくちゃいい音楽だったりするんだもん(笑)。
庄村聡泰
(ライター/スタイリスト)